ちっちっchi

　逢い引き・・・
そんな言葉が頭の中をぐるぐる巡っていた。

[0回]

きっかけは一本の電話だった。
 
「辰也か明日の晩会えないか？」
 
そんなこと言ってもここは秋田だ。
簡単に良い返事ができる訳じゃない。
 
「いきなり明日って言われても・・・」
「お前俺に会いたくねぇのかよ」
「・・・・・」
会いたくないと言えば嘘になる。
そんなに短い距離じゃないことも知っているはず。
「明日練習試合で秋田に行くんだ」
本当に会えるのか？！
「ああ、わかった。明日はどこに泊まるの？」
ホテルに行けば他の桐皇メンバーにバレるから、近くの湖畔に呼び出した。
 
　今日は月がきれいだな
空を見上げると満天の星が降ってきそうだ。
 
「こんなに暗いところでお前を見付けられなかったらどうするつもりだったんだよ」
 
電話よりももっと鮮明な声に、ここに大輝が来たことを知る。
自然と綻ぶ顔に片手が伸ばされて頬に触れた。
 
「よぉ、思ったよりも顔がよく見えるな」
 
「今日は満月だから明るいんだよ」
 
一歩近づいてもっと近くで大輝の顔を見上げた
月を見上げていた大輝の視線に自分の顔が映し出された。
「ああ、月に映し出されたお前の顔を間近で見るのも悪くねぇな」
静かな声に心の底まで透き通るような気持ちになった。
それなのに頬に触れただけでそれ以上大輝は触れてはくれない気か？
まあ、相変わらずみたいだな。
「キス・・・しないの？」
「ん？お前は顔に似合わず大胆だな」
目を細めて笑う顔をじっと見つめる。
急に真顔になると顎に長い指が伸ばされた。
「お前からしたって良いんだぜ」
顔を近づけながら、こんな状態でもそんなことを言う。
ああ、本当は君はシャイだってこと知ってる。
それなら遠慮なく俺からさせてもらうけど。
片手を伸ばして大輝の首に回すと体を伸ばしてその唇に唇を重ねる。
一度触れてしまえば、大輝は魔法から解けたみたいにぎゅっと体を抱きしめてくれた。
触れただけの唇のはずが、唇の間を割って舌が入り込み舌を絡める。
 
「ん・・・くふっ・・・」
 
角度を変えながらより奥まで舌を伸ばされて全身が痺れていく。
俺はこんな感覚を待っていたのか？
どこまでも続く満天の星を見上げながら草の上に倒れ込んだ。
 
「良いところだな」
「ああ・・・」
 
横に寝転がった大輝が嬉しそうに空を見上げた。
 
「お前ってさ、やっぱり冷てぇわ」
 
急にそんなことを言われても何だか嬉しくて笑顔のまま横を向いた。
 
「久しぶりだってのに、他の奴に接する態度とちっとも変わらねぇのな」
「そうかな？でも俺は誰にでもキスとかしないんだけどな」
その言葉に大輝の頬に赤みが差した。
いいんだ。
言葉にしなくても俺にはわかることがあるから
大輝、この澄んだ月は君みたいだ。
本当に心のきれいな君には俺なんかもったいないでしょ
 
「もう一回キスしてくれないのかい？」
 
「バーカ、一回と言わずに何度でもしてやるよ」
 
俺達の恋は始まったばかりだ。
 
 
end

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今日、５月１２日は青氷の日なので
青氷のＳＳを書いてみました。
氷室さんは純粋な青峰が眩しくて
それ以上踏み出せない、意外にピュアな二人に萌えます(*^▽^*)